3章 「夜逃げ」につき。〜置物夫とグレーな息子と、私〜

こんにちは。定期的に訪れる「母親閉店ガラガラ」
育児本? 読みましたよ。何冊も。
「子供の個性を認めましょう」
「怒りのピークは6秒待って」
……いや、無理。 6秒待つ前に、私の口からはすでに「なんで普通にできないの!?」という毒矢が、音速で射出されています。シュババババ。
私の母は、他人と比べる天才でした。
「あの子はあんなにできるのに、あんたは」
その呪いの言葉を浴びて育った私は、あんな親にはならないと誓ったはずなのに。
気がつけば鏡の中に、あの頃の母親がニヤリと笑って立っている。
「普通のことができない」
その事実が、私の心の地雷をピンポイントで踏み抜いていくんです。 「あの子はもうアレができる」「やばい、うちはまだだ」 脳内は常に、得体の知れない焦燥感に支配された株価暴落チャート状態。
このまま一緒にいたら、私はこの子の自己肯定感を、大根おろし器でズタズタに削ってしまう。 それは嫌。それだけは絶対に避けたい。
というわけで。 私は、「物理的距離」という名の究極の育児ハックを発動します。
「あとはよろしく」
そう言い残して家を出る私を、我が家の夫(通称:置物)は、微動だにせず受け入れます。
彼はすごいですよ。 感情の起伏がなさすぎて、もはや北欧家具のサイドボードかなんかだと思っています。
私がイライラで沸騰したヤカンのようになっていても、彼は「無口・無臭・無反応」のトリプルコンボ。 彼がお風呂や寝かしつけを担当している間、私は外で「仕事のこと」を考えます。
仕事はいい。
正解がある。理論がある。
子供みたいに、予測不能な動きで私の神経を逆撫でしてこない。
スタバでコーヒーを啜りながら、あるいは夜の街を徘徊しながら、LINEの通知を待つ。
「寝たよ」
その一言が、私にとっての「帰還許可証」。
4日連続で夜逃げ(一時避難)したこともあります。 ごめんね、置物ちゃん。でも、君が置物でいてくれるおかげで、私は今日、加害者にならずに済んだんだ。
「変わらなきゃ」と思うのはもうやめました。
本を読んでも変われないのは、私のOSがもうそうなっちゃってるから。
だったら、エラーが起きる前に電源を切って、本体を遠くに置くしかない。
今夜も、静まり返ったリビングに、そーっと帰宅します。 寝顔だけは、本当に天使なんだけどね。
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